にんにくは北極圏や赤道直下の高湿度のジャングルを除けば、世界中どこでも育つ植物のためか世界各地ににんにくにまつわる話が伝わっています。
中でも、紀元350年から375年の間に書かれた医学書で世界最古のサンスクリット文書がインドに現存しています。
にんにくの起源にまつわるインドの話
にんにくに関わるその話は、光り輝く神と戦闘好きの悪魔の戦いから始まりますが、戦いを休戦して神と悪魔が大海原をかき混ぜると太陽と月が生まれ、さらにそこから不老不死の霊薬が生まれたと記されているようです。
この霊薬を盗み飲みした悪魔は、神に首をはねられてしまいます。その首から血がしたたり落ち、地面からにんにくが生えてきたと伝えられており、この話がにんにくの起源と言われています。
同じような伝説が他にもあり、傷ついた悪魔が立ち去った後に右足があった位置ににんにくが生え、左足があった位置に玉ねぎが生えてきたと言われています。
この伝説は世界最古のバウアー書によりますが、にんにくが様々な病気や治療に役立つことも詳しく書き綴ってあります。倦怠感、咳、鼻かぜ、皮膚炎、痔、消化不良、慢性便秘、リューマチ、ハンセン病など多くの病状を改善する力があると書かれています。
にんにくと宗教
釈迦の弟子の舎利弗が、胃の調子が悪いときににんにくを食べて治ったと言う記録が残っており、仏教では僧侶はにんにくを薬として用いてきたようですが、食品として食べることは認められていませんでした。また、チベット仏教の世界では、僧侶がにんにくを食べると寺に入ることが一切禁止という決まりがありました。
しかし、チベットはとても寒いので僧侶たちは無視して食べていたようです。バラモン教のにんにくにまつわる話では、僧侶たちがにんにくの効能を得るために雌牛に3日間にんにくを与えて、その乳をバラモン教の僧侶が飲んだそうです。
にんにくは情欲をかき立てるからと言う理由から、今でも一部のバラモン教徒やジャイナ教徒の間ではにんにくは食べられていません。
予防医学としてのにんにく
インドでは古くから伝わるアーユルベーダとともに、にんにくは予防医学として用いられてきました。冬になってから風邪を引いたり体調を崩したりしないように、秋口から毎日にんにくを食べることを習慣にしていたようです。また、にんにくにはちみつを注いだエキスを、虚弱体質の子どもや体力が衰えた高齢者に与えて病気を予防していました。
東洋では漢方薬が今でも公に認められており、西洋とは違ってにんにくが薬として用い続けられています。 かつて貧しかった東洋の国ではにんにくは神聖なものであったり、魔除けであったり、薬であったりと実に様々な意味合いと効力がありました。今でもにんにくは一般の野菜と比べて、どこか不思議な魅力を持っています。