化学的な薬が治療に使用されるようになったのは20世紀に入ってからのことで、数千年にわたって薬とは自然の恵みによるものでした。
昔は、身近にある薬草を乾燥させたり発酵させたりして治療に役立ててきました。
中でもにんにくは万能薬と言っていいほど、あらゆる病気の治療に効果があることが古代から認められていました。
日本ではにんにくを漢方薬の一つとして今でも用いています。
五臓の機能を活性化するにんにく
漢方では、臓器は「肝・心・脾・肺・腎」の五臓に分かれますが、にんにくにはすべての臓器の機能を活性化させる働きがあります。
特に、脾臓に効果的に働きかけて飲食物の消化吸収を良くします。
また、気血を生成したり水分の吸収、排出を促進します。にんにくを摂取することで体が温まり血の巡りが良くなります。
にんにくは胃を温め消化機能を助ける働きがあるので、漢方的には胃が冷えて腸の働きが鈍くなっている人が用いると良いとされています。
お腹がすいてくると胃がしくしくしたり、お腹が冷たかったりする人や、やる気が出ない、疲れやすいなどの症状に悩む人は、ニンニクを加熱して毎日ひとかけを食べることで体質が改善されます。
気を巡らせ血を体の隅々まで運ぶにんにく
人の体を構成して生命活動を維持する基本的なものが、漢方では「気・血・水」と言われています。
この三つが過不足なくバランスが取れていると、健康な状態が保たれるのですが、にんにくにはこの三つを補う働きをします。
にんにくを食べることによって気血が巡り体が温まると、消化吸収機能が高まり、胃もたれや食欲不振、冷えによる腹痛や下痢が改善できます。
漢方では昔から、にんにくは主に赤痢の薬として用いられてきました。
赤痢はいまだに発展途上国の乳幼児を中心に、毎年数十万人の死者を出すといわれる病気ですが、にんにくの滋養が多くの子どもたちを救っています。
にんにくは生食よりも加熱して
にんにくはすりおろしたそのままをドレッシングなどに入れることもありますが、刺激性と興奮性があるために、心が不安定になったり、攻撃的、利己的な傾向になると言われています。このことを避けるためには、よく過熱して辛みを取って甘みを引き出すことが大事です。辛みのない加熱されたにんにくは、生命エネルギーを増やしてくれます。適量は1日に1かけです。
にんにくはのぼせやほてりの特徴がある中医学でいう<陰虚>のタイプの人は、ニンニクの生食はさけ、加熱したものをひとかけ様子を見ながら摂取するようにしましょう。
にんにくは疲労回復のための強壮剤代わりに食べられることも多いのですが、刺激の強い食べ物なので取り過ぎに注意しましょう。また、ワルファリンなどの抗血栓剤やアスピリンを服用している人はニンニクを食べるのは控えた方が良いとされています。日々の食事に上手に取り入れて健康に役立てましょう。